国際離婚の手続き~円滑に進めるための完全ガイド~

国際離婚をする場合、日本と外国では離婚手続きの流れが異なります。
この記事では、具体的な手続きの流れや必要書類、法的なルール、注意点について解説します。複雑な国際離婚を円滑に進めるためには、全体的な流れや、どの国の法律に準拠する必要があるのかを把握する必要があります。
国際離婚の手続きの流れ

国際離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。夫婦の国籍や居住地によって、手続きの流れが異なります。
協議離婚
協議離婚とは、夫婦が話し合いのうえで合意し、離婚届を提出することで成立する離婚方法です。
協議離婚の手続きの流れ
- 夫婦で離婚について話し合い、合意する
- 離婚届に必要事項を記入し、夫婦双方と証人2名の署名・押印する
- 夫婦の本籍地または所在地の市区町村役場に離婚届を提出する
- 相手国の在日大使館(領事館)でも離婚の届け出をする
協議離婚は、裁判所を通さずに離婚できるため、手続きが簡単で時間や費用がかからないというメリットがあります。ただし、離婚条件について夫婦間で合意できない場合は成立しません。
調停離婚
調停離婚とは、夫婦間の話し合いで合意に至らない場合に、家庭裁判所に調停を申し立てて行う離婚方法です。
調停離婚の手続きの流れ
- 日本の管轄の家庭裁判所に調停を申し立てる
国籍や婚姻関係等を証明する書類を添付 - 調停委員立ち会いのもと、話し合いを重ねる
- 合意に至れば調停調書を作成し、離婚が成立する
- 日本の市区町村役場に離婚届を提出する
- 相手国でも離婚手続きを行う
調停では、公平な立場の調停委員が間に入ることで、冷静に話し合いを進められるというメリットがあります。また、成立した場合の調停調書は、確定判決と同等の効力を持ちます。
裁判離婚
裁判離婚とは、調停でも合意に至らない場合に、家庭裁判所に離婚訴訟を提起して行う離婚方法です。
裁判離婚の手続きの流れ
- 日本の家庭裁判所に離婚訴訟を提起する
- 裁判で双方の主張を行い、争点を整理する
- 証拠調べとして、当事者への尋問が行われる
- 判決が出て、離婚の成否が決まる
- 判決確定後、離婚届を市区町村役場に提出する
- 必要に応じて、相手国の法律に従って離婚手続きを行う
裁判では、夫婦の合意は必要なく、裁判官の判断で離婚の成否が決まります。ただし、時間と費用がかかり、精神的負担も大きいというデメリットがあります。
国際離婚で、相手国でも離婚を認めてもらうためには、その国の大使館に書類を提出するなど別途手続きや届出が必要な場合があるため注意が必要です。
国際離婚に必要な書類

国際離婚の手続きには、離婚の種類や状況に応じてさまざまな書類が必要になります。ここでは、日本で行う協議離婚、調停離婚、裁判離婚の場合と、外国で離婚する場合に分けて、必要書類を解説します。
日本で離婚する場合
日本での離婚では、離婚の状況に応じて、以下の書類が必要となります。
協議離婚の必要書類
- 離婚届(夫婦双方と証人2名の署名・押印が必要)
- 戸籍謄本(本籍地以外の市区町村役場に離婚届を提出する場合)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 外国人配偶者の場合、在留カードの呈示が必要
- 未成年の子がいる場合は、親権者を決めて記載する
調停離婚の必要書類
- 夫婦関係調整調停の申立書
- 戸籍全部事項証明書
- 収入印紙、切手
- 調停成立後は、調停調書の謄本を添付して離婚届を提出
裁判離婚の必要書類
- 離婚訴訟の訴状
- 離婚調停不成立調書
- 夫婦それぞれの戸籍謄本
- 判決確定後は、判決書謄本と確定証明書を添付して離婚届を提出
外国で離婚する場合
外国で離婚する場合は、以下の書類が必要です。
- 離婚判決謄本
- 離婚判決確定証明書
- 上記書類の日本語訳文
- パスポートのコピー
外国で離婚が成立した場合は、日本の法律に基づき、必要書類を在外日本大使館または帰国後に日本の市区町村役場に提出して離婚届を行います。その他、状況に応じて以下のような書類が必要になる場合があります。
- 婚姻要件具備証明書
- 住民票の写し
- 外国語の書類には訳文が必要
- 年金分割のための情報通知書
- 源泉徴収票、預金通帳のコピーなど
国際離婚の法的ルール

国際離婚には、どの国の裁判所で手続きができるか(国際裁判管轄)と、どの国の法律を適用するか(準拠法)という2つの重要な法的ルールがあります。ここでは、それぞれのルールについて解説します。
国際裁判管轄は?どの国の裁判所で離婚できる?
国際離婚では、どの国の裁判所で離婚手続きができるかという「国際裁判管轄」の問題があります。2019年4月に施行された改正法により、以下の場合に日本の裁判所で離婚手続きができるようになりました。
- 被告の住所が日本国内にあるとき
- 夫婦が共に日本の国籍を有するとき
- 原告の住所が日本国内にあり、かつ、夫婦の最後の共通の住所が日本国内にあるとき
- 原告の住所が日本国内にあり、かつ、被告が行方不明であるときや被告の住所地国でされた同一の身分関係についての訴えに関する確定判決が日本で効力を有しないときなど、特別の事情があるとき
裁判権の行使は国の主権に属するため、各国の裁判所は国内法を適用して自国が裁判管轄を有するかを判断します。日本では2019年の改正法により、身分関係事件についての国際裁判管轄規定が明文化されました。
国際裁判管轄が日本の裁判所に認められる場合、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つの方法が考えられます。ただし、協議離婚制度を持たない国ではその効力が認められない可能性があるので注意が必要です。
準拠法 – どの国の法律が適用される?
国際離婚では、どの国の法律を適用するか(準拠法)が重要な問題となります。日本では、「法の適用に関する通則法」で準拠法が定められています。
通則法27条により、以下の順番で準拠法が決まります。
- 夫婦の本国法が同一であれば、その本国法による
- 夫婦の常居所地法が同一であれば、その常居所地法による
- 夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、日本法による
- 上記のいずれにも該当しない場合は、夫婦に最も密接な関係がある地の法律による
日本人配偶者が日本を常居所とする場合、外国人配偶者の国籍に関わらず日本法が適用されることがあります。日本法が準拠法となる場合、日本の民法に従って協議離婚、調停離婚、裁判離婚の手続きをすることができます。
準拠法が外国法の場合、その国の法律に従って手続きを進める必要があります。多くの国では裁判離婚が一般的です。また、イスラム圏など一部の国では離婚自体を認めていない場合もあるので注意が必要です。離婚に伴う親権や養育費の問題は、離婚とは別の法律関係として扱われ、子を中心に決められます。
国際離婚の注意点

国際離婚では、準拠法と国際裁判管轄の問題に注意が必要です。日本の「法の適用に関する通則法」により、夫婦の本国法や常居所地法などの順番で準拠法が決まります。まず、この点を確認することが重要です。
一方、国際裁判管轄は、どの国の裁判所で離婚手続きができるかを決めるルールです。2019年の改正法により、被告の住所が日本にある場合や、夫婦が共に日本国籍である場合などに、日本の裁判所で離婚手続きが可能になりました。
また、協議離婚を認めていない国も多いため、日本で成立した協議離婚が相手国で認められない可能性があります。離婚後の在留資格の変更なども視野に入れておく必要があります。
国際離婚に伴う親権や子の監護をめぐるトラブルの可能性も考慮しておきましょう。海外に子どもが連れ去られた場合、ハーグ条約に基づき子の返還を求めることができます。ただし手続きは複雑なため、この場合は、特に弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ

国際離婚では、準拠法と国際裁判管轄の問題に注意が必要です。日本の協議離婚が相手国で認められない可能性や、子どもの問題、在留資格の変更など、複雑な手続きが伴います。トラブルを避けるためには、経験豊富な弁護士に相談することがおすすめです。
小原・古川法律特許事務所は、早くから海外に目を向け、海外での研鑽を重ねてきました。当事務所には、経験豊富な弁護士や海外の弁護士資格を所持する国際弁護士が所属しています。グローバル化が進む日本での法的なトラブルに、海外で得た専門的な知識と経験で対応いたします。どんなお悩みも、お気軽にご相談ください。
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