国際離婚と重婚のおそれ

1. はじめに

国際結婚は、旅行や留学、オンラインプラットフォームの普及により、ますます一般的になり、日本でも毎年数万件が成立しています。しかし、文化や言語の違い、育児に対する考え方の相違などが原因で、国際結婚には離婚のリスクが伴います。配偶者が母国に帰りたいと望んだり、生活環境で問題が起きることもあります。

国際離婚は、単なる夫婦間の問題解決ではなく、法的に複雑な手続が必要です。日本人と外国人が別々の国に住んでいる場合、どの国で離婚手続を進めるか、どの国の法律が適用されるかなどが問題となります。婚姻届を複数の国で提出している場合、それぞれの国で手続を行わないと、法的に婚姻関係が続くこともあります。

特に「重婚」のリスクには注意が必要です。離婚手続が完了していない状態で再婚すると、重婚状態になる恐れがあり、これは違法で刑事罰を受けることがあります。国際離婚には法的知識が重要で、適切な手続を行うことが大切です。

2. 国際離婚の裁判管轄

国際離婚で最初に直面する問題は「裁判管轄」で、どの国の裁判所が離婚を扱うかを決める重要な問題です。配偶者が異なる国籍や居住地にいる場合、この問題は特に複雑になります。日本の裁判所は、配偶者の一方が日本に住所や居所を持っている場合、または婚姻解消が日本に大きな影響を与える場合に管轄を有します。

裁判管轄の選択には実務上の課題もあります。たとえば、居住地が異なる場合や複数の国で婚姻手続を行っている場合、どの裁判所で手続を進めるかを慎重に判断する必要があります。また、外国での居住期間が影響することもあります。

裁判管轄の選択は、親権や財産分与に大きな影響を与えるため、どの国で手続を行うかを慎重に検討することが重要です。

日本では、2019年4月1日に施行された人事訴訟法では、以下の場合は日本の裁判所が離婚の裁判管轄を有するとされています。

 (1)被告の住所又は居所が日本国内にあるとき;

 (2)当事者双方が日本国籍を有するとき;

 (3)当事者の最後の共通の住所が日本国内にあったとき;

 (4)その他特別な事情(相手方に遺棄された場合、相手方が行方不明の場合等)があるとき。

3. 国際離婚の準拠法

国際離婚には「準拠法」が関わり、どの国の法律を適用するかを決める重要な要素です。準拠法は日本の「法の適用に関する通則法」で決まります。夫婦が同じ国籍を持っている場合、その国の法律が適用され、異なる国に住んでいる場合は、共通の居住地の法律や最も密接な関係がある国の法律が適用されることがあります。但し、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、日本法によります。

準拠法が違うと、財産分与や親権の取り決めに大きな影響を与えます。例えば、日本は財産を基本的に半分に分けるのが原則ですが、アメリカでは収入や貢献度によって変わります。また、日本では親権は基本的に単独親権ですが、ヨーロッパやアメリカでは共同親権が一般的です。準拠法を理解せずに離婚手続を進めると、後で予期しない問題や重婚リスクが生じる可能性があります。

4. 離婚手続

国際結婚の離婚手続は、どの国で進めるか(裁判管轄)と、どの法律を使うか(準拠法)によって決まります。複数の国で婚姻手続をした場合、それぞれの国で離婚手続が必要になることがあります。すなわち、両国で離婚手続を行わないと、重婚や法的な問題が生じる可能性があります。

日本での離婚手続には、協議離婚(話し合いで合意)、調停離婚(家庭裁判所で調整)、裁判離婚(裁判で最終判断)の3種類があります。外国での手続には、法律、言語、文化の違いに注意が必要で、外国の離婚判決があれば、日本での離婚も可能です。

複数国での婚姻手続には、親権や財産分与の矛盾、重婚のリスクが生じることがあります。

5. 裁判離婚の国での離婚手続

日本で裁判離婚を進めることは、国際離婚においても非常にメリットがあります。裁判離婚は、家庭裁判所を通じて離婚を成立させる手続で、夫婦間で合意が得られない場合に行われます。親権や財産分与、慰謝料などについて裁判所が最終的に判断します。国際離婚でも、配偶者が外国に住んでいてもこの手続は有効です。

裁判離婚を選ぶメリットは、法的に確実で再婚や財産分与でのトラブルを防げることです。日本の裁判所での判決は多くの国で認められ、外国籍の配偶者にも正式に通知が送られるため、手続を進めることが可能です。

裁判離婚は、訴状提出から送達、審理を経て判決が下されますが、相手方が外国に住んでいる場合、送達に時間がかかることがあります。また、国際的な財産分与の問題については、各国の法律に従う必要があります。

6. 重婚の場合の刑罰

国際離婚における重大なリスクの一つが「重婚」です。重婚は、前の婚姻が解消されていない状態で新たに結婚することを指し、多くの国で違法です。特に国際結婚では、手続の不備や誤解で重婚が発生しやすいです。

重婚が発生する例としては、複数国での婚姻手続が未完了のまま再婚した場合や、外国で離婚判決を受けたものの、その判決を日本国内で届出していしなかった場合があります。また、離婚手続の不備により再婚が違法になることもあります。

日本では、重婚は刑法第184条により処罰され、2年以下の拘禁刑に処せられます。重婚が発覚すると、再婚が無効になるほか、財産分与や相続問題、社会的信用の喪失が生じることもあります。

重婚を防ぐためには、婚姻解消がすべての国で法的に完了していることを確認することが重要です。

7. むすび

国際離婚で重要なのは、どの国の裁判所で手続を進めるべきか、どの国の法律が適用されるかという点です。各国の法制度が離婚後の生活に大きな影響を与えるため、事前に理解しておくことが大切です。また、日本での離婚手続が外国で認められない場合、別途外国で手続を行う必要があります。さらに、外国での離婚判決を日本で届出しないと、重婚状態になるリスクもあります。

国際離婚をスムーズに進めるためには、専門家に相談することが最も効果的です。各国での手続を確認し、必要に応じて証拠や書類を整理しておくことも重要です。慎重な計画を立て、再婚時にはすべての国で婚姻が解消されていることを確認することが、トラブルを防ぐ鍵となります。

弊事務所では、国際離婚手続のお手伝いをしています。ご質問、ご来所予約等は、oflo@oharalaw.jpまでご連絡下さい。

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