国際離婚の裁判で争う前に知っておくべき基礎知識

国際結婚をしたものの、生活の違いや価値観のズレから、別れを考えるようになった。そんなとき、気になるのが「国際離婚はどうやって進めればいいの?」ということ。特に相手が外国に住んでいたり、日本と法律が違ったりすると、話し合いだけでは解決が難しく、裁判になるケースもあります。この記事では、国際離婚の裁判で争う前に知っておきたい大切な情報を、わかりやすくまとめました。不安を減らし、冷静に対応するための参考にしてください。
1.国際離婚ってどんなケースを指すの?

「国際離婚」という言葉を聞いたとき、多くの人がまず思い浮かべるのは「日本人と外国人の夫婦が離婚するケース」ではないでしょうか。確かにそれも正解なのですが、実際にはもう少し幅広い意味を持っています。国籍が異なる夫婦はもちろん、たとえば日本人同士であっても、どちらかが海外で長く暮らしていたり、婚姻生活の中心が外国にあったりする場合も「国際離婚」として扱われることがあるんです。
さらにいえば、どちらか一方の国籍が外国でなくても、相手が海外に住んでいて、連絡や手続きがすぐに取れないような状態でも「国際的な要素を含む離婚」として、通常の日本国内の離婚とは違う進め方になるケースもあります。つまり、夫婦の国籍・居住地・生活拠点・法律適用国のいずれかに“国をまたぐ要素”があれば、それは「国際離婚」の対象になりうるのです。
このように、国際離婚というのは法律的にも手続き的にも非常にややこしくなりがちです。しかも、相手とのコミュニケーションに言葉の壁や文化の違いがあると気持ちがすれ違いやすくなり、スムーズな話し合いが難しくなってしまうことも多いのが実情です。
2.国際離婚で裁判にまで発展する主な原因とは

本来なら、どんな夫婦でも離婚は話し合いで穏やかに済ませたいと思うものです。しかし国際離婚になると、ちょっとした意見の違いや言葉の誤解がきっかけで大きなトラブルに発展してしまうことが少なくありません。
たとえば離婚そのものにはお互い同意していたとしても、子どもの親権をどちらが持つかという点で意見が対立することがあります。日本では2025年3月現在、親権はどちらか一方が持つのが原則ですが、外国では両親が共同で親権を持つことが一般的な国も多く、その考え方の違いが溝を深める要因になっていました。しかし、日本でも2024年5月17日に共同親権に関する改正法が成立し、2026年5月24日までに施行される予定ですので、日本の制度も大きく変わるでしょう。
また、経済的な問題も裁判に発展する大きな原因のひとつです。財産分与、慰謝料、養育費、生活費の負担など。お金にまつわる問題は、文化や制度の違いが大きく関係してくるため、話し合いが平行線になってしまうことが多いのです。
相手が海外に住んでいる場合、時差や連絡手段の問題もあり、何度もやりとりを重ねるのが難しくなります。さらに、相手が裁判に応じようとしない、無視を続ける、急に国外に引っ越してしまうなど、予測不可能な行動を取ることもあり、それがまた大きなストレスや不安につながっていきます。
こうした要因が重なって、「もう直接話し合うのは無理」と判断せざるを得ない状況になり、最終的に裁判という形で決着をつける流れになっていくのです。
3.裁判の前に確認しておくべき大切なポイント「管轄」と「準拠法」

国際離婚に関する裁判は、国内の離婚とは根本的に違うところがあります。まず押さえておきたいのが、「どこの国で裁判を起こすのか」という“管轄”の問題です。夫婦のうちどちらがどこに住んでいるか、国籍はどちらか、過去にどの国で婚姻生活を送っていたかなど、いくつもの条件を総合的に見て判断されます。
たとえば相手が海外にいる場合、原則としてはその国で裁判を起こすことが基本とされています。しかし日本の裁判所が一定の条件を満たすことで、相手が外国にいたとしても日本で裁判を進めることが可能な場合もあります。その判断は非常に複雑で、法律の専門知識が必要になる部分でもあるため、事前にきちんと調べたり、専門家に相談したりすることが重要です。
さらに重要なのが、「どこの国の法律を使って裁判を進めるか」という“準拠法”の問題です。日本の法律を使うのか、相手の国の法律を使うのかによって、親権の判断や財産分与の結果が大きく変わってくることがあります。
当事者の国籍、どこで結婚したのか、どこで生活していたか、どこの国に現在居住しているか。これらすべてが、どの国の法律を使うかを決める判断材料になります。だからこそ、「私は日本人だから日本の法律でいいはず」と思い込まずに、自分のケースに当てはまる準拠法をきちんと把握することが大切です。
4.子どもに関する問題はとても複雑で感情的になりやすい

離婚において「子ども」の問題は非常にデリケートで、そして深刻です。特に国際離婚では、国ごとの制度や文化の違いが大きく影響してきます。たとえば、日本では単独親権が原則ですが(2025年3月現在)、欧米諸国では共同親権が一般的。親権をめぐる争いは、価値観の違いが露骨に現れる場面でもあります。
また、子どもがどの国で暮らすかという点も大きな争点です。片方が日本に、もう片方が海外に住んでいる場合、どちらの国で育てるのか、どう面会をするのか、学校はどうするのかなど、考えることが山のようにあります。特に子どもがまだ小さい場合は自分で意思をはっきり伝えることができないため、より慎重な対応が求められます。
さらに問題なのが「子どもの連れ去り」です。親のどちらかが一方的に子どもを日本に連れて帰ってしまった場合、国によっては「違法な連れ去り」とされ、国際的な問題に発展することもあります。これはハーグ条約の対象となる行為で、条約加盟国の間では速やかな子の返還が求められます。
このようなリスクを避けるためにも、離婚に際して子どもに関する取り決めはしっかりとした法的手続きと合意のもとで行うことが非常に大切です。感情だけで動いてしまうと、後々取り返しのつかない事態を招くこともあるのです。
5.財産分与と慰謝料は「当然の権利」ではないこともある

日本では、婚姻中に築いた財産は夫婦で折半するという考え方が一般的です。でも、これは日本国内のルールであって、世界中で通用するわけではありません。たとえば、名義がある方の財産として扱われる国では、相手名義の口座や不動産は「自分には関係ない」と判断されることもあります。
慰謝料に関しても同様で、日本では精神的苦痛があれば慰謝料を請求できる制度がありますが、外国の中にはそもそも慰謝料という考え方が存在しない国もあります。「浮気されたから当然慰謝料がもらえるはず」と思っていても、相手の国の法律が適用された場合まったく取り合ってもらえないこともあるのです。
このように財産分与や慰謝料の取り決めひとつとっても、どの国の法律が使われるかによって結果が大きく左右されます。相手が海外に資産を隠していたり、報告義務を果たさなかったりするケースもあるため、調査や証拠の収集にも慎重さが求められます。
6.弁護士に相談するのは早ければ早いほど良い理由

「まだ離婚するかどうか決めていない」「裁判になるかも分からないから様子を見よう」と思っている人も多いかもしれません。でも、国際離婚の場合は、何か起きてからでは遅いというケースが少なくありません。たとえば、相手が急に国外に移動してしまったり、話し合いに応じなくなったりすると、対応が一気に難しくなってしまいます。
そんなときに頼りになるのが、国際離婚に詳しい弁護士の存在です。法的なアドバイスだけでなく、実際にどうやって裁判を進めるべきか、どの国で、どの法律を使って交渉するべきかといった具体的な戦略を一緒に考えてくれます。
さらに書類の翻訳や通訳の手配、海外との書類のやりとり、相手の所在調査など、自分ひとりでは到底こなせないような業務もサポートしてもらえるので、精神的な負担もかなり軽くなります。特に、子どもがいる場合や、相手との連絡が難しい場合には、早期の相談が事態を大きく左右することもあるんです。
7.まとめ

国際離婚はただの夫婦の別れではありません。法律、文化、言語、価値観、距離といったさまざまな要素が絡み合い、ときに感情のぶつかり合い以上に複雑な問題を引き起こします。そんな中で裁判を視野に入れたとき、何も知らずに飛び込んでしまうのはとても危険です。
でも逆に言えば、きちんとした知識と準備があればどんなに大変な状況でも冷静に対応することができます。早めに行動することで自分や子どもの将来を守るための選択肢を増やすことができるのです。
小原・古川法律特許事務所では、外国人との離婚問題や親権・財産分与など、複雑な国際家族法の案件に豊富な経験があります。国際的なトラブルに不安を感じている方も、外国語対応可能な弁護士が丁寧にサポートいたします。お気軽にご相談ください
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