英文契約書の正しい書き方~トラブル防止のための完全ガイド~

英文契約書にサインをする際、その書き方や日付の表記方法を間違えてしまうと、後々トラブルに発展してしまうことがあります。本記事では、契約書のサイン欄の正しい記入方法から、日付の表記ルールまで、実務で役立つ知識を解説します。

英文契約書の基本

英文契約書の基本構成や、日本の契約書との違いを理解することは、サインや日付の書き方を正しく習得する上で欠かせません。ここでは、英文契約書の特徴や構成要素について解説します。

英文契約書とは

英文契約書とは、英語で書かれた契約書のことを指しますが、単に日本語の契約書を英訳したものではなく、英米の慣習や法体系をベースに作成された契約書を意味します。英文契約書には、以下のような特徴があります。

規定内容が細かくボリュームが大きい

英文契約書は取引条件の詳細まで記載するのが通常で、和文契約書よりも条数も多いことが特徴です。

網羅的な記載

英米法の「口頭証拠排除原則」により、英文契約書では想定される事態の処理方法を網羅的に記載する必要があります。

定義条項の有無

英文契約書は通常第1条に定義条項があり、頻繁に使用される用語の説明が書かれています。

契約書の位置づけの違い

英米では契約書を「最終合意」とみなし、それ以外の合意は排除されますが、日本での契約書は一応の合意を表すもので、問題があれば誠実に協議して解決することが可能です。

契約書の基本的な構成要素

契約書の基本的な構成要素は以下の通りです。

表題(Title)

契約書の内容を端的に表すタイトルを付けます。例えば、「業務委託契約書」「秘密保持契約書」「不動産売買契約書」などです。

前文(Whereas)

契約当事者の氏名(名称)や契約締結日など、契約の基本情報を簡潔に記載します。また、契約書内で当事者を指す用語(「甲」「乙」など)もここで定義します。

定義条項(Definition)

契約書内で用いる用語の定義を記載します。

本文(Operative part)

契約のメインパートで、当事者間のルールや権利義務などを具体的に規定します。自社と相手方の権利義務を漏れなく記載することが重要です。

一般条項(General Provisions)

準拠法や合意管轄など、多くの契約書で汎用される条項を記載します。

末尾文言

合意を確認したことを示す定型句を記載します。

署名欄

契約締結日を明記し、各当事者が署名またはサインするための欄を設けます。

(必要に応じて)別紙・付属書類

英文契約書では、本文で参照する詳細な情報を記載した別紙を、署名欄の後に添付することがあります。

以上が、英文契約書の基本的な構成要素です。契約内容に応じてアレンジは必要ですが、これらの要素を押さえることは、適切な英文契約書作成のポイントとなります。

英文契約書のサイン欄の書き方

英文契約書のサイン欄は、契約の成立を左右する重要な部分です。ここでは、サイン欄の基本的な記入方法と、Corporate Sealについて解説します。

サインの言語選択

英文契約書へのサインは、基本的に英語で行うのが一般的です。ただし、日本人が署名する場合、漢字やカタカナを使用しても問題ありません。重要なのは、契約当事者が本人であることを明確に示すことです。サインの言語よりも、誰がサインしたのかを特定できることが肝要です。

役職・氏名の記入方法

サインの際は、単に氏名を記入するだけでなく、会社名や役職名も併記することが望ましいとされています。これにより、契約当事者の属性や権限を明確にできます。具体的には以下のように記入します。

  • For and on behalf of 会社名
  • 役職名
  • 氏名

法人を代表して契約書にサインする場合、上記のように会社名と役職名を明記することで、個人としてではなく会社を代表する立場で署名していることを示せます。

法人契約の場合の注意点

法人同士の契約の場合、契約書には各社の代表者印を押印するのが一般的ですが、英文契約書ではサインが用いられます。この場合、署名者が「当該法人を代表する権限を有している」ことが前提となります。

また、日本の実務では使用されない「Corporate Seal(会社の公印)」の押印が求められるケースもあります。

Corporate Sealとは何か

orporate Seal(会社印)とは、英米法系の国や地域で使用される、会社の公式な印章のことを指します。主に以下のような特徴があります。

  1. 会社の正式名称が刻印されている
  2. 契約書など重要な法的文書に押印して、会社としての同意や承認を示す
  3. 伝統的には紙や羊皮紙に蝋で押す形式だったが、現在は機械で圧印する方式が一般的
  4. 英国、カナダ、オーストラリアなど英連邦諸国の会社で使用されることが多い
  5. 米国では州によって規定が異なるが、Corporate Sealの使用は必須ではなくなってきている
  6. 日本の会社印鑑に似ていますが、日本ほど一般的ではない

英文契約書にCorporate Sealの押印を求められた場合、日本企業では代表者印などで代用できることが多いです。しかし、Corporate Sealの扱いなどの各国の商慣行の違いには、注意が必要です。

法人間の英文契約では、サインの方法だけでなく、相手国の法制度や商慣行の違いを踏まえて適切に対応することが重要です。

英文契約書の日付の書き方

一般的に英文契約書の日付(date)には、アメリカ式とイギリス式の2つの表記方法があるため、注意が必要です。

アメリカ式

アメリカ式は「月/日/年」の順で、例えば2024年4月1日は「April 1, 2024」と表記します。

イギリス式

イギリス式は「日/月/年」の順で、同じ日付は「1 April 2024」と表記します。

日付は契約書内で表記を統一する

契約書内で、アメリカ式とイギリス式のどちらを採用するかは、契約当事者間で決めます。ただし、一つの契約書内での表記方法は、統一する必要があります。また、契約締結日とは別に、当事者が実際に署名した日付を併記することもあります。日付の表記は曖昧さを避けるためにも、数字のみではなく月を文字で書くことが推奨されています。

 英文契約書のサインと日付に関するよくある質問

英文契約書のサイン欄と日付欄の記入方法は、契約の法的効力に大きな影響を与えます。以下に、よくある質問とその回答を紹介します。

Q. サインは英語で行う必要がありますか?

A. 必ずしも英語でサインする必要はありません。日本人が署名する場合、漢字やカタカナを使用しても問題ありません。重要なのは、契約当事者が本人であることを明確に示すことです。

Q. 契約締結日と署名日が異なる場合、法的効力はどうなりますか?

A. 原則として、契約書に明示された契約締結日ではなく、全当事者の署名が揃った日が契約の効力発生日となります。契約書に明確に発効日を記載することが重要です。契約締結日と署名日が大きく離れている場合、トラブルの原因になる可能性があるため注意が必要です。

Q. 日付はどのように記載すべきですか?

A. 日付は曖昧さを避けるために、数字のみではなく月を文字で書くことが推奨されています。また、アメリカ式(月/日/年)とイギリス式(日/月/年)の表記方法がありますが、どちらかに統一することが重要です。

Q. 契約書に署名や押印をしなくても法的効力はありますか?

A. 日本の民法上、契約は当事者の合意のみで成立します。しかし英米法の考え方では、契約書への署名が契約成立の重要な要件となります。トラブル防止のため、英文契約書にはサインを行うことが強く推奨されます。

まとめ

英文契約書のサインと日付は、契約書の法的効力に影響を与える重要な部分です。正しい書き方やルールを把握することがトラブルを避ける上で重要です。また、英文契約書は、相手国の法制度や日本との商慣行の違いも考慮する必要があります。不明な点がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

小原・古川法律特許事務所は、早くから海外に目を向け、海外での研鑽を重ねてきました。当事務所には、海外の弁護士資格を所持する国際弁護士や経験豊富な弁護士が所属しています。グローバル化が進む日本での法的な手続きに、海外で得た知識と経験で対応いたします。お気軽にご相談ください。

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