国際離婚で直面する親権問題 ~子供の幸せを守るための実践ガイド~

国際離婚をする場合、子どもの親権がどうなるのか不安に思っている人も多いのではないでしょうか。日本の場合、子どもの親権は単独親権制度によって定められていますが、外国では共同親権制度が採用されているケースがあります。この記事では制度の違いが、子どもの親権にどう影響するのかについて紹介します。

国際離婚と親権の基礎知識

国際離婚における親権の決定は、夫婦の国籍や子供の国籍によって適用される法律が異なるため複雑です。以下に、国際離婚と親権に関する基礎知識をまとめました。

親権決定の基本ルール

親権の決定においては、子供の常居所地(通常住んでいる場所)の法律が適用されるのが一般的です。したがって、子供がどの国に居住しているかにより、適用される法律が決まります。例えば、日本に居住している場合は日本法が、他国に居住している場合はその国の法律が適用されることがあります。

親権が争われる事例

婚姻関係を解消した場合、日本では単独親権制度が適用されますが、フィリピンでは離婚制度がなく結婚無効の判決や法的分離(legal separation)で親権を巡る取り決めが行われることがあります。こうした制度の違いから親権を巡って激しく争われるケースがあります。

親権決定の流れ

日本では一般的に、以下のような流れで親権が決定されます。

  1. 夫婦の話し合い(協議)で決定するのが原則
  2. 協議で決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて合意を目指す
  3. 離婚調停でも決まらない場合は、訴訟を提起して裁判で親権者を定める

国際離婚で親権がどのように決まるのか

国際離婚では、親権の決定方法が夫婦の国籍によって大きく異なります。日本法が適用されるケースと、外国法が適用されるケースの違いを理解することが重要です。

適用される法律の決定要因

国際離婚で親権を決める際に適用される法律は、主に以下の2つの要因によって決まります。

子の国籍

子の親権を定める法律は、まず子の国籍によって決定されます。具体的には、以下の順番で適用される法律が決まります。

  1. 子の本国法が父又は母の本国法と同一である場合には、子の本国法
  2. 父母の一方が死亡し、又は知れない場合は、他の一方の本国法
  3. その他の場合には、子の常居所地法

つまり、子と父母のいずれかが同じ国籍を持っている場合は、その国の法律に従って親権者が定められます。例えば、日本人の父とフィリピン人の母の子供が日本国籍を持っていれば、日本法に基づいて親権者が決定されます。

子の常居所

上記1と2に該当せず、子の国籍が父母のどちらとも異なる場合は、子の常居所地の法律が適用されます。

常居所とは、ある人が継続的に生活の本拠として居住している場所のことを指します。つまり、子供が日本で暮らしているのであれば、日本の法律に従って親権者が定められることになります。

一方、子供が親元を離れて外国で生活している場合は、その国の法律に基づいて親権者が決まります。

以上のように、国際離婚における親権は、子供の国籍と常居所という2つの要因によって、適用される法律が決定されるのです。親権を巡るトラブルを避けるためにも、これらのルールを理解しておくことが重要です。

日本の単独親権制度

日本の現行法では、離婚すると父母のどちらか一方のみが親権者となる「単独親権制度」が採用されています。つまり、離婚後は父母の一方だけが子どもの養育に関する権利と責任を持つことになるのです。

しかし、この単独親権制度には様々な問題点が指摘されてきました。例えば、親権を持たない親が子育てに関わりづらくなったり、親権者に養育費用の負担が偏ったりするなどの課題があります。

こうした中、2024年5月に、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を可能とする民法改正案が国会で可決・成立しました。この法改正により、2026年までに、離婚後も父母が共同で親権を行使できるようになる見込みです。

外国の共同親権制度

離婚後の共同親権制度は、多くの国で導入されています。ただし、その内容や運用方法は国によって異なります。ここでは、主要国の共同親権制度の特徴をまとめました。

アメリカ

  • 多くの州で共同親権が認められている
  • 親権の決定は子どもの最善の利益に基づいて判断される
  • 父母の性別によって親権に有利不利はない

ドイツ

  • 1998年以降、共同親権が認められている
  • 教育や医療などの事項は両親の協議により決定
  • 少年局が共同親権の行使を援助

イギリス

  • 2014年から共同親権が認められている
  • 子どもが18歳になるまで、親は共同して子どもを監護する義務がある

オーストラリア

  • 1995年に共同親権に近い「共同の親責任」制度を導入
  • 2006年の法改正で、離婚後も両親が平等に重要事項を決定することが子どもの利益に適うと推定
  • 共同養育を強く推奨する一方、DV等の問題がある家庭への対応が課題

ただし、各国の親権概念は日本と同じとは限らず、共同親権を認めていても、実質的には、現状の日本の単独親権と大差ない場合もあります。また、面会交流中の子どもの殺害事件など、共同親権の問題点も指摘されています。

国際離婚における親権決定の留意点

国際離婚で親権を決める際は、まず子の国籍と常居所に基づいて適用される法律を確認することが重要です。日本人の子であれば原則として日本法が適用されますが、子が外国に住んでいる場合は、その国の法律で親権者が決まる可能性があります。

また、欧米など共同親権制度を採用している国の場合、日本のように離婚後に単独親権とはならない点にも注意が必要です。親権を巡る争いを避けるためにも、事前に専門家に相談し、適用される法律と制度の違いを十分理解しておくことが肝要といえるでしょう。

国際的な子の連れ去りとハーグ条約

国際結婚の増加に伴い、夫婦の一方が相手の同意なく子を連れて自国に帰るケースが問題となっています。このような「国際的な子の連れ去り」は、子の利益に反し、深刻な影響を与える可能性があります。

そこで、子の不法な連れ去りから子を保護するために、1980年に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」が採択されました。ハーグ条約は、原則として子を元の常居所地国に迅速に返還することを定めています。

日本は2014年にハーグ条約を締結し、子の返還や面会交流の実現に向けた国際協力の枠組みが整備されました。

子の返還が認められる条件

子の返還が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

①子が16歳未満

②申立時に日本にいる

③監護権の侵害がある

子の返還が拒否されるケース

以下の場合は、子の返還が拒否される可能性があります。

①1年以上経過し子が新しい環境に適応している

②返還により子の心身に重大な危険がある

③子が返還を拒否している

国際的な子の連れ去りは、各国の法制度の違いが絡む複雑な問題です。親の権利よりも子の利益を最優先に、関係機関が連携して適切に対応していくことが重要といえるでしょう。

まとめ

この記事では、国際離婚をした場合の親権について解説しました。国際離婚では、妻と夫の居住国や適用される法律が異なるケースが多く、養育費の請求も複雑になります。母子家庭や父子家庭の経済的基盤を守るためにも、弁護士に相談しながら、冷静に対応していくことが肝要です。

小原・古川法律特許事務所は、早くから海外に目を向け、海外での研鑽を重ねてきました。当事務所には、海外の弁護士資格を所持する国際弁護士や経験豊富な弁護士が所属しています。グローバル化が進む日本での法的な問題の解決に、海外で得た知識と経験で対応いたします。お気軽にご相談ください。

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