国際経済紛争の解決には仲裁が必要 国内紛争の解決には裁判、調停、示談等の紛争解決手続が多用されている。同じ国の当事者(法人、個人)の紛争であればこれらの方法は有効である。しかし国際経済紛争となると、当事者の国籍、法律、使用言語、文化等の差異があることから一方の当事者の国の裁判所で、その国の特別公務員である裁判官に紛争を解決してもらうというのは中立性に懸念が生じるうえ、使用言語は一方の当事者の公用語であり、その国の裁判所に提出する文書等はその公用語に翻訳せねばならず、時間と費用が非常に高くつくことになる。 近時の経済紛争では私企業間の紛争だけでなく国又は国営企業と私企業との紛争もありうる。投資紛争等はその例である。これら国又は国営企業を相手として自国の裁判所に裁判を提起することは主権免除の原則(国家はその同意なくして被告として外国の裁判管轄権に服することは免れることをいう)から国際経済紛争では仲裁が多用されているのである。 国際仲裁では私的自治が尊重され、私的な裁判官である仲裁人は当事者の合意で選任され、仲裁地や仲裁法・規則、使用言語も当事者の合意により決めることが出来る。しかも裁判は三審制の場合が多いが、仲裁は一審制でありより早く解決することが出来る。 仲裁判断の執行は約146か国が加盟している1958年の「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(ニューヨーク条約)で執行が確保されている(多くの場合は仲裁判断が尊重され、それに従って任意履行されている)。このように国際経済取引にはそれに伴う紛争を国際仲裁のような合理的な手段によって解決できることが必要不可欠であるということができる。 またFTAの時代といわれているようにTPPを含む多数の自由貿易交渉が締結され、これらの条約の中にはこれらの条約に関連する紛争は国際仲裁で解決するという条項が含まれている。従って国際紛争の解決には今後ますます仲裁が用いられる傾向にある(注1)。
グローバル化する事業活動と日本の国際紛争解決法制の整備
(注1)最近、「世界やアジアにおける仲裁の現況を概観した上で、日本の仲裁の世界における現在の地位について検討し、我が国における仲裁制度の歴史的発展や、日本仲裁の未来の可能性について多角的に論じる」という目的で「仲裁法制の過去・現在・未来」の特集号が日本評論社より発行された。その企画趣旨に関しては、古田啓昌「企画趣旨」法律時報87巻4号4頁、また国際仲裁の長所に関しては、小原淳見、「国際仲裁の国際標準」、法律時報87巻4号6頁、アジア諸国と日本の仲裁の比較に関しては、手塚裕之、前田葉子、「アジア仲裁の展開と日本」、法律時報87巻4号13頁、日本社会と仲裁に関しては、早川吉尚、「日本における仲裁の歴史的位相」、法律時報87巻4号19頁、建設仲裁に関しては、大本俊彦「建設仲裁」法律時報87巻4号37頁を各参照。
|